9月中旬、長崎県対馬市の病院に元福岡ソフトバンクホークス投手の摂津正さん(42)の姿があった。治療ではなく「学び」のためだ。
3年前の年明け、慢性骨髄性白血病と診断され、自身の病気にとどまらず、医療の課題に関心を持った。
離島の医療もその一つ。対馬は趣味の釣りでも訪れたことがあり、身近な存在だった。離島の野球振興にも関わっていて、この日も元チームメートの内川聖一さんと小中学生向けの野球イベントに参加していた。
病院では施設を見学し、医師らスタッフと意見を交わした。「離島の病院が抱える課題について教えてもらい、自分は患者の立場から不安な気持ちや要望を話した」。今年は福岡市の病院でも講演し、骨髄バンクのドナー登録を呼びかけた。
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自身の治療は、当初は腰の骨に注射を打って骨髄液を採取する検査が定期的に必要だった。今は薬の服用のみ。「分子標的薬」という白血病細胞の増殖を防ぐ抗がん剤を飲んでいる。
ただ、薬の効果が出るか、アレルギーや肝臓に負担がかからないか、体に適した薬に巡り合うまでが大変だったという。
「薬は何回か替えて、今はようやく落ち着いている。時間がかかる病気ですが、寛解(病状が一時的、永続的に消えること)という時期が来ればいいなと思っています」
患者同士でのやり取り、話題は「薬の価格」
白血病と診断されたことは、インスタグラムで公表した。ファンから激励のメッセージが寄せられ、同じ白血病を患う人たちともやり取りをする機会になった。
そこで、話題は「薬の価格」に。自身が毎日服用する薬は、保険適用前で1錠1万円ほどかかる。高額だが、体に合わなかった場合などは、廃棄するしかない。
患者が服用しなかった「残薬」は、過去の調査で抗がん剤だけでも年間700億円超とされる。そんな問題にも目を向ける。
「患者となって身をもって感じることはたくさんある。自分に何かできることがあればしていきたい」
病気と向き合い、命の大切さを感じる日々。改めて今、かみしめている言葉がある。
■当たり前のようだが、「大事…